カウンセラーのクレーム対応|ややこしいクライアントへの関わり方

今回は、ややこしいクライアントへの対処法について説明していきます。
結論から言うと、相手の言動の背景にある心理を知り、客観的な視点で関わることが、消耗を防ぐ近道です。

対人支援の仕事をしていると、必ずと言っていいほど出会うのが、いわゆる「ややこしいクライアント」です。

例えば、

  • 決断できずに真逆のことを言う人
  • 少しの指摘にも深く傷つき、長文の謝罪を送ってくる人
  • 急に手のひらを返して攻撃してくる人

こうしたクライアントへの支援は、支援者自身の心と体の消耗にも直結します。

ちなみに私の場合は、以前コールセンターでSV(スーパーバイザー)の経験があり、スタッフが対応できないクライアントの対応をしていました。
また、私の夫は公的機関でのカウンセラーの経験が長いのですが、夫の場合は、手に負えないクライアントは最終権限のある上長が対応していたとのことです。

ただ、自営業の場合は違います。
SVも上長もいないので、クレーム体質のクライアントに対しても自身で最後まで対応しないといけないのです。
また、対応を怠ると、場合によっては返金を求められたり、消費者センターに訴えられたりする事態にもなりかねません。
ですので、これまで多くのクライアントと関わってきた経験から、こうした「ややこしさ」の背景にある心理構造を、パターン別にお伝えします。
また、支援者側が消耗しないための関わり方も、あわせて整理します。

なお、本記事の事例は、複数のケースの要素を組み合わせ、個人が特定されないよう大幅に抽象化した、架空のものです。

もくじ

  1. 「クレーマー」として処理する前に考えたいこと
  2. パターン1:決断できずに真逆のことを言う人
  3. パターン2:些細な指摘にも過剰に反応する人
  4. パターン3:急に手のひらを返して攻撃してくる人
  5. パターン4:厳しいことを伝える必要があるとき
  6. パターン5:依存してくるクライアントへの関わり方と支援の終わり方
  7. 支援者が消耗しないための心の持ち方と相談先
  8. まとめ

「クレーマー」として処理する前に考えたいこと

激しい感情をあらわにしたクライアントに対して「この人はクレーマーだ」と決めつけて処理するのは簡単ですし、支援者側は精神的にも楽になります。
ただ、それだと支援自体がそこでストップしてしまいます。

例えば、飲食店などであれば、

  • 店内で怒鳴る
  • 理不尽な要求をする
  • 土下座を強要する

などのカスハラ(カスタマーハラスメント)があった時点で出禁になると思います。

ですが、我々カウンセラーは心を扱う仕事ですので、そこで見切りをつけるのではなく、ぜひ「なぜ、この人はこんな態度を取るのだろう?」「なぜ、突然、手のひらを返す発言をするのだろう?」という視点で、背景や心情を考えていただきたいと思います。

その発言に至るまでには、様々な心情があると思います。
例えば、

  • あなたを味方だと思っていたのに、裏切られたという思いがあるから
  • 責められて攻撃されたと思っているから
  • 現実が変わらない葛藤があるから
  • 次こそは変われるという期待があったから
  • 加害者扱いがそもそも嫌だから

これらの本音があるのなら、正論や嫌味な言い方や過剰な謝罪などをせずに、素直に言えばいいのにと思うかもしれません。
ですが、ほとんどのクライアントは、これらの本音に気づいていません。
また、仮に気づいている人がいても、到底認めたくない、受け入れられないという人もいます。
さらに、これらは自分の弱みを見せる行為でもあります。
だからしたくないという人もいるでしょう。

なので、それがゆがんだ形でクレームとして表れていたり、思い通りにならずパニックになった時にとっさに出た反応だったりする、という視点で見てください。
例えば、

  • 困った時には必要以上に謝罪をする
  • 思い通りにならないと正論を言ってくる

というのは、一見、相反するように見えますが、根底の本音は同じ場合もあります。
これらは、追い詰められた時にとっさに出る、防衛的な反応とも言えます。

また、その本音は一次感情とも言います。
怒りは二次感情であり、その根底には「寂しい」「悲しい」「虚しい」などの本音が隠れています。

怒り(二次感情)の根底に、「寂しい」「悲しい」「虚しい」という本音(一次感情)が隠れていることを示す図

また、クライアントの一次感情が理解できてくると、それらをこちらから先に伝えることで、クライアントと強い信頼関係を築けるケースもあります。
要は「この人は私のことを本当にわかってくれる」と感じてもらえる、ということです。

ですので、これらの視点を持つことで、どんなクレームに対しても動じないというメンタルが構築されると思います。
また、クライアントの攻撃的な発言の背景を考えることで、さらに深い心情を理解する視点が身につき、カウンセラーとしての成長にもつながります。

パターン1:決断できずに真逆のことを言う人

このタイプのクライアントは「Aにしようと思う」と言った翌日には「やっぱりBかもしれない」と真逆のことを言い、それを何度も繰り返します。
支援者側としては「前回と言っていることが違う」ため、振り回されて心が疲弊してしまいます。

また、これらが何度も繰り返されると、

  • 昨日、言ったことを覚えてないのか?
  • 何度、同じことを繰り返すんだ?
  • いい加減にしてほしい

などと、イライラが募ったり、それが蓄積して怒りの感情が湧いてきたりすることもあると思います。

ですが、ここで大事なのは、この心の揺れを「決断力のなさ」「学習能力のなさ」などとして見ないことです。
決断できないクライアントの多くは、頭では理解していても心が追いついていない状態にあります。
これは、ある意味、理性で感情を抑え込もうとしている状態だとも言えます。

特に、長年の関係性やトラウマが絡む決断の場合、頭の理解と心の受容の間には、大きな葛藤が生まれます。
支援者側に必要なのは「早く決断させる」ことではなく「揺れながらでも、少しずつ受け入れようとはしている」という視点を持ち続けることです。

このイライラを抑える方法としては、同じクライアントの支援開始当初と現在を、あえて比較してみることです。
そうすると、かなり自己成長していることに気づくはずです。
人にはそれぞれの成長スピードがあります。
ですので、決断が出ないことに焦りを覚えたら「この人は、今、心の中で葛藤しているんだな」「前に進もうとしているんだな」という視点を持つことで、あなた自身の焦りも和らぐと思います。

パターン2:些細な指摘にも過剰に反応する人

軽い指摘や、事実の確認をしただけなのに「すみません、ごめんなさい」という謝罪が何通も返ってくることがあります。
いわゆる「鬼LINE」「鬼謝罪」です。

支援者からすると「そこまで謝らなくていいのに」と戸惑うと思います。
これは、RSD(拒絶敏感性:Rejection Sensitive Dysphoria)と呼ばれる特性の可能性があります。
他者からの指摘や注意を、脳が過剰な痛みとして処理してしまう状態です。
この特性を持つクライアントは、支援者の言葉を、実際の意図以上に「責められた」「拒絶された」と受け取りやすくなります。

対応のポイントは「ここが違います」と指摘するのではなく「ここは、こう直すと良いと思いますよ」という提案に変えることです。
そうすることで、クライアントのダメージは軽減されると思います。
また、その提案を受け取るかどうかの選択権は、クライアントにあるという姿勢も重要です。
RSD傾向の人は、相手の空気感にも敏感です。
そのため、相手を尊重する関わりをすることで、場の緊張感も和らいでいくと思います。

また、謝罪が過剰に続く場合は、その都度「謝らなくて大丈夫ですよ」と短く伝え返すことも必要です。
謝罪文が続く状況というのは、クライアント自身も軽くパニックになっている状態と思われるため、まずは落ち着かせることが重要です。

パターン3:急に手のひらを返して攻撃してくる人

支援を受け始めた当初は「先生だけが、私をわかってくれる」「ここまで話せる人はいない」などと慕ってくるのに、自分の思うような反応がなかったり、何かのきっかけで急に態度が豹変したりして、攻撃的な言葉を向けてくることがあります。
こういったことは、対人支援職ではよく起こります。

具体例として、

  • 「私はこれだけ傷ついた」と長文で何度も送ってくる
  • 的外れな正論をぶつけてくる
  • 支援を受けて、むしろ悪化したと批判してくる

このケースは最悪の場合、周囲やSNSなどに誹謗中傷を書き込まれたり、悪評を広められたりする可能性があります。

ただ、心理カウンセリングの場面では、この状態を転移と解釈します。
ちなみに転移とは、クライアントが、過去の重要な人物(親など)に向けていた感情・期待・態度を、無意識のうちにカウンセラーに向けてしまう現象のことです。
例:「この先生は私を批判する父と同じだ」と感じる

また、逆転移とは、カウンセラー側がクライアントに対して抱く感情的反応です。
クライアントの転移に触発されたものや、カウンセラー自身の未解決の問題が投影されたものが含まれます。
例:クライアントに過度に同情したり、逆にイライラしたりする反応
どちらも心理療法の重要な材料として扱われ、その場面を客観的に見て適切に対応することが求められます。

転移と逆転移の違いを比べた図

また、我々リジェネのクライアントのケースだと、モラハラ加害者の夫(妻)に、このような方が目立ちます。
支援開始時には丁寧に慕ってくれていたのに、回数を重ねるごとに、以下のような発言が出るケースがあります。

「支援を受けて何の意味があるんですか?」
「妻にも悪い部分があると思う」
「なぜ私だけ悪者にされるのだ」

これらは、クライアント自身の本音であり、今まで言えなかったイライラや怒りをカウンセラーにぶつけている状態です。
転移の解釈では、これらの根源は父親や母親に言えなかったことの再現と捉えます。
ですが、我々はモラハラ解決を専門にしているため、この場面は被害者である妻との間で起きているパターンの再現だと解釈します。
今までは、ある意味、よそ行きの対応、つまり外面のみで我々に対応していたのですが、ようやく家庭内のやり取りが表に出たという解釈です。
モラハラ夫は外面が良く、内弁慶だと言われるのは、こういう状態を指します。

さらに広く捉えると、このクライアントは人と深い関係になると、このような発言や行動を取る、ということでもあります。
なお、転移は、カウンセラーとクライアントの関係が深まってきて起こるものです。

ですので、面談の場面で起こっていることを客観的に伝えて、これは繰り返しのパターンであると相手に気づいてもらう試みが、自己理解を深める上では重要になります。
これは、カウンセラー自身が率直に感じたことを伝える、つまりロジャーズが主張する純粋性で伝え返す感覚です。

具体例だと、

  • 私に対して、かなり苛立ちを感じているようですが、本当はどう思っていますか?
  • 私を責めるように、パートナーも責めたりするのですか?
  • かなり見下すような発言に感じますが、これはパートナーにもやっていませんか?
  • 私を使って、パートナーをコントロールしようとしていませんか?
  • 私を責めて謝罪させるまでが、ワンセットになっていませんか?

これらを伝えると、クライアントからさらに本音が出ることもありますが、カウンセラー側には、それを受け止める度量も必要だと思います。
また「やっと本音が出ましたね」などと客観的に伝えてみるのも、自己理解を深める上では効果的です。
ただし、これは、あくまでも信頼関係が構築されていることが大前提の介入方法です。

クライアントがクレームを言ってきている場合でも、それらを真に受けると、こちらも怒りに取り込まれやすいのですが、これは転移なのかもしれないという客観的な視点が持てれば、イライラせずに冷静に相手の発言を分析できると思います。
これは、私が長年この仕事を続ける中で身につけたスキルでもあります。

ですが、クライアントが完全にキレている場合は、まず相手の言い分を理解し、こちらに落ち度があるならば謝罪もすべきです。
ただ、明らかに理不尽な言い分であったり、約款に書いてあることを無視して自分に有利にコントロールしようとしてきたりする悪質な場合は、毅然と対応することが重要です。
さらに、できないことはできないと、はっきり何度も伝える必要があります。

パターン4:厳しいことを伝える必要があるとき

支援を継続していく上で、厳しいことを伝える場面というのは必ずあります。

具体例としては、

  • 自身の問題と向き合わない
  • やると言ったのにやらない
  • 現実と向き合わない

などがあります。

例えば、リジェネのケースだと、モラハラ夫が嫌で別居して離婚に向けて話を進めているのに、突然、夫のもとに戻りたいと言い出すケースです。
支援者側としても、正直、なぜその選択をするのか理解できないという感情が湧いてきたり、支援期間が長いほど、これまでの支援は何だったのかという虚無感や無力感も湧いてきたりします。
ですが、最終的に自分の人生の選択をするのは、クライアントでしかないのです。

ここでできるのは、モラハラ夫のもとに戻った時に、現実にどういうことが起こるかという助言です。
おそらく、復縁した当初は一時的に優しくなりますが、妻がこの家から出ていかないと悟った瞬間に、またモラハラが再発する、と伝えます。
それは、これまでの我々の経験則からの助言です。
それでも、モラハラ夫のもとに戻りたいというならば、クライアントの意思を尊重するしかない、ということです。

そして、重要なのは、この話をする前に「私はカウンセラーとしてではなく、一人の人間として、あなたに幸せな人生を歩んでほしいと思っている」という気持ちと、ずっとそう思って支援してきた姿勢を伝えることです。
そう伝えることで、厳しいことを言う場面であっても、クライアントはあなたの助言に耳を傾けてくれると思います。

パターン5:依存してくるクライアントへの関わり方と支援の終わり方

支援期間が長くなるほど、クライアントがカウンセラーに依存することがあります。
一般的には、カウンセラーに依存するのは良くないと言われています。
その理由としては、

  • クライアントの自立する力を奪う
  • クライアントが離れられなくなる
  • クライアントの自分で考える力を奪う

などが挙げられます。

ただ、私は長年支援をしてきて、クライアントが自己成長する上で、一時的な依存は致し方ないと思っています。

その理由は、クライアントの多くが、長い人生の中で今まで誰にも自身の問題を言えず、一人で抱えてきたからです。
なので、人生で今まで言えなかったことを初めて言えた相手に対して、依存が生まれるのは自然なことです。
人生で初めて自分のことを理解してくれた、そんな相手に対して徐々に心を開き、自身の本音を伝えていきます。
この作業は、本当に信用できて安心できる相手でないとできない行為です。
また、それをしっかり受け止めてくれる相手に絶大な信頼を寄せるのは当然ですし、その信頼関係があって初めて、自身の人生の問題と向き合えると思います。

ただ、カウンセラー側は、クライアントから依存されている場合であっても常にフラットでいることが重要です。
今は依存されているんだなと客観的に状況を把握することが必要です。
その上で、支援終了時にはクライアントを自立させないといけないので、計画的に対応を変えていく必要があります。
これは、離別感を持たせたり、境界線を引いたりする行為になります。
クライアントからすると、突然、突き放された、冷たくなったと捉えると思いますが、それも想定しながら、毅然と線を引いて対応していく必要があります。

依存されたカウンセラーが、計画的に対応を変えて、支援終了時にクライアントを自立させるまでの流れの図

例えば、これまで、選択や判断が求められる場面で、カウンセラーに判断を委ねてきたケースです。
これについては「あなたはどう思うの?」と問いかけて、支援が終了しても、自分で考えられる体質を身につけてもらう必要があります。
ただ、クライアントによっては、そうした態度を取ることで怒りをあらわにする場合があります。
その場合は、意図を説明することも必要だと思います。

支援者が消耗しないための心の持ち方と相談先

対人支援職を長く続ける上で重要なのは、常に自身のメンタルをフラットに保ち、イライラなどを翌日に持ち越さないように処理することです。
また、クライアントの発言に一喜一憂しないことも大切です。
これは、クライアントが褒めてきた場合も同じです。
決して舞い上がることなく「そう思うんだ」という視点で受け取ります。
また、この人は関係性の初期に「相手を褒める」という方法で関係を築くタイプなのだ、という分析にも使えます。
これらを冷静に観察し、クライアントの自己理解を深める資料として活用すると、説得力が増すと思います。

とは言っても、カウンセラーを始めたての頃は、クレームに慌てるのは当然だと思います。
我々も最初はそうでした。

今となっては、モラハラ解決のリジェネは2015年の開業から、2500件以上の面談を重ねてきました。
また、夫は公的機関でのカウンセリング経験が10年以上あり、総面談回数は20,000回を超えます。
ですので、様々なクライアントに対峙して今があります。
その中には、モンスターレベルのクライアントも多数いました。
もちろん、クライアントが言うことを真に受けて、人間不信になったこともあります。
この仕事を続けるのが本当にしんどくて、投げ出したくなったことは一度や二度ではありません。

ただ、そういう時に重要なのが、信頼できる人に相談することです。
カウンセラーの世界では、これをスーパービジョンと呼びます。
いわゆるメンターや師匠、先生などがいる場合は、その方に相談し、行き詰まっている点やカウンセラー自身が抱えている問題について助言をもらったり、場合によってはセラピーを受けたりすることを指します。

私の場合は独学ですので、支援で行き詰まった時は経験が豊富な夫に相談していました。
夫には、カウンセリングの師匠やメンターと呼ばれる人がいるので、新人の頃は毎日のように相談していたとのことです。

ここで言いたいのは、新人カウンセラーが、これらの困難な問題を一人で解決するのには限界がある、ということです。
ですので、あなたに先生やメンターがいるのであれば、ぜひ頼ってください。
もしいないのであれば、我々を活用していただいても構いません。
些細なことでも結構ですので、下記の無料相談を活用していただければと思います。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回は、クレーマーと呼ばれるクライアントの背景と、関わり方について説明しました。

対人支援職は、クライアントの最もプライベートで、デリケートな部分に触れる仕事でもあります。
また、そのような深い部分に触れるからこそ、クレームという形になりやすいとも言えるのです。

ですが、そのクレームに至る背景や心情などを理解していくことで、支援者自身の心身の消耗を軽減し、何よりも質の高い支援を続けていくことができると思っています。

もし、クライアントとの関わり方について不安なことがあれば、些細なことでも構いませんので、お気軽にご連絡くださいね。
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