約款(利用規約)の基本|ひとり起業のカウンセラー・占い師向け
今回は、カウンセラーや占い師がお客様に示す、約款(やっかん。利用規約のこと)の基本について説明していきます。
結論から言うと、利用規約は、お客様に示して同意を得ることで契約の内容にできます。
そもそも利用規約は、お金や約束のトラブルからあなた自身を守るためのものです。
例えば、次のようなことが起きても、ルールがなければあなたが不利になりやすいです。
- 予約をしたのに、連絡なくキャンセルされる
- サービスを受けたのに、料金が支払われない
- 分割払いにしたのに、途中から支払われなくなる
そこで、あらかじめ「どう扱うか」を決めて、お客様に示しておきます。
ただし、お客様に一方的に不利な条項は法律で無効になったり、合意したものとみなされなかったりします。
これまで「特定商取引法に基づく表記の書き方|カウンセラー・個人事業主向け」の記事で、返品やキャンセルの条件を書くことを説明しました。
今回は、その条件を含む利用規約の考え方です。
お客様向けの規約を作ろうとするあなたも、こんな不安を持っていませんか。
- 個人でやっているのに、利用規約は必要なの?
- ネットのひな型を、そのまま使っていいの?
- キャンセル料を決めても、無効になることはあるの?
- 規約は、自分で作ってもいいの?
ですが、民法と消費者契約法のルールを押さえれば、考え方は難しくありません。
規約は、弁護士でなくても自分で作れます。
また、知らないまま作ると、せっかく書いた条項が無効になってしまうこともあります。
そこで今回は、次の3点について説明します。
- 約款・利用規約・契約書・定款の違い
- お客様に示して同意を得る方法と規約を変えるときのルール
- 無効になりやすい条項と規約に入れる項目の例
この記事は、民法と消費者契約法の条文と法務省の資料をもとにした一般的な内容です(2026年11月4日時点)。
また、私は弁護士ではないため、個別の判断はできません。
具体的な規約の作成や、条項が有効かどうかの判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。
もくじ
- 約款・利用規約・契約書・定款の違い
- お客様に示して同意を得る
- お客様がいつでも見られるようにしておくこと
- 規約を変えるときのルール
- 無効になりやすい条項
- 規約に入れる項目の例
- 不安なときは弁護士に確認する
- まとめ
約款・利用規約・契約書・定款の違い
約款とは、大量の同じ取引を速く効率よく行うために作った定型的な取引の条項です。
法務省の資料では、定型約款にあたる例として、次のものが挙げられています。
- 鉄道やバスの運送約款
- 電気やガスの供給約款
- 保険約款
- インターネットサイトの利用規約
民法の「定型約款」は、次の3つをすべて満たすものです。
この決まりは、2020年4月1日から始まりました。
- ある特定の者が、不特定多数の人を相手にする取引であること
- 内容の全部または一部が画一的であることが、双方にとって合理的であること
- 契約の内容にすることを目的として、その特定の者が準備した条項の全体であること
一方で、法務省の資料では、一般的な事業者どうしの取引で使う契約書のひな型や、労働契約のひな型は、定型約款にあたらないとされています。
「利用規約」は、お客様に示すルールの呼び名です。
ウェブサイトの利用規約は、先ほどのとおり、定型約款の例に挙げられています。
「契約書」は、特定の相手と、内容を個別に決めて交わす書面のことです。
ここでは、そのように整理します。
「定款(ていかん)」は、会社の基本のルールを定めたものです。
株式会社では、設立のときに、発起人(ほっきにん。会社を作る手続きを進める人)が定款を作ります。
作った定款は、公証人(こうしょうにん。契約や書類について、公的な証明をする人)の認証を受けないと、効力が生じません。
合同会社では、出資者になろうとする人(会社法では「社員」といいます)が定款を作ります。
合同会社では、公証人の認証は要りません。
個人事業主は、会社を作るわけではないので、定款は作りません。

では、カウンセリングや鑑定の利用規約は、定型約款にあたるのでしょうか。
個人のお客様に、同じ条件で提供するなら、あたる可能性があります。
ただし、あたるかどうかは、取引の内容によります。
この点は、弁護士などの専門家に確認してください。
お客様に示して同意を得る
お客様は、規約の細かい条項まで読まないことも多いです。
そこで民法では、次のどちらかの場合に、お客様が約款の個別の条項にも合意したものとみなします(民法第548条の2)。
- 約款を契約の内容にするという合意をしたとき
- あらかじめ、約款を契約の内容にすることを、お客様に表示していたとき
つまり、申込みの前に「この利用規約が契約の内容になります」とお客様に示しておくことが大切です。
ただし、お客様の利益を一方的に害する条項は、合意したものとみなされません。
法務省の資料では、売買契約で、思ってもいなかった別の商品の購入を義務づける条項が、例に挙げられています。
では、お客様が規約をいつでも見られるようにするには、どうすればよいのでしょうか。
お客様がいつでも見られるようにしておくこと
お客様から請求があったときは、遅滞なく適切な方法で約款の内容を示す必要があります(民法第548条の3)。
すでに約款を書いた書面を渡していたり、データで提供していたりするときは、改めて示す必要はありません。
注意したいのは、合意の前に、正当な理由なく請求を断った場合です。
この場合、前の章の「合意したものとみなす」という決まりは、使えなくなります。
そのため、ホームページに規約のページを作り、いつでも見られるようにしておくと安心です。
例えば申込みフォームには「利用規約に同意する」というチェック欄を設ける方法があります。
では、規約をあとから変えたくなったときは、どうすればよいのでしょうか。
規約を変えるときのルール
規約は、あとから変えたくなることもあります。
民法では、お客様一人ひとりと合意しなくても、次のどちらかの場合は規約を変えられます(民法第548条の4)。
- 変更がお客様の一般の利益に合うとき
- 契約の目的に反せず、変更の必要性や変更後の内容が合理的なとき
規約を変えるときは、いつから変わるのかを決めます。
そのうえで、次の3つを、インターネットなどでお客様に知らせる必要があります。
- 規約を変えること
- 変更後の内容
- いつから変わるのか
2つ目の場合は、変更が始まる日までに知らせないと、変更が有効になりません。
規約の中に、変更するときの知らせ方を書いておくと、あとで迷いません。
無効になりやすい条項
個人のお客様との契約には、消費者契約法が関係します。
この法律では、ひとり起業のあなたは「事業者」です。
個人のお客様は「消費者」です。
ただし、お客様が事業のために契約する場合は、消費者にはあたりません。
お客様に一方的に不利な条項は無効になります。
主なものは、次のとおりです。
- 責任の免除(第8条):事業者の責任をすべて免除する条項。責任があるかどうかを事業者が決める条項。
- 解除権の放棄(第8条の2):事業者が約束を守らなかったときの、お客様の解除権を放棄させる条項。
- キャンセル料(第9条):同じ種類の契約の解除で、事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分。
- 支払いの遅れ(第9条):年14.6%を超える遅延損害金。
- 一方的に不利な条項(第10条):法律の任意規定(にんいきてい。契約に書かなかったときに使われる、法律の決まり)より、お客様の権利を制限したり義務を重くしたりして、信義誠実の原則(お互いに誠実に行動するという考え方)に反してお客様の利益を一方的に害する条項。
例えば「いかなる場合も、当方は一切責任を負いません」という書き方は責任をすべて免除する条項にあたります。
また、責任の一部を免除する場合でも、事業者の故意や重大な過失による場合は無効になります。
キャンセル料については、いくらまでなら有効かは、一律には決まりません。
そのため、この記事では、金額の目安は示しません。
なお、キャンセル料を請求するときに、お客様から説明を求められたら算定の根拠の概要を説明するよう努める決まりもあります(第9条第2項)。
規約に書けば必ず守られるわけではありません。
無効になりやすい条項は避けて、あなたの身を守れる範囲で決めておくことが大切です。

規約に入れる項目の例
一例として、オンラインカウンセリングの利用規約には、次のような項目があります。
- 規約の適用と言葉の意味
- 利用料金と支払いの方法、遅れたときの扱い
- セッションの予約の方法
- キャンセルの扱いと返金
- 遅刻、中断、欠席の扱い
- セッションの記録
- 退会と利用の停止
- 責任の制限と損害賠償
- 個人情報の保護
- 知的財産権
- 規約の変更
- 管轄の裁判所と準拠する法律
ひとり起業のあなたは、自分のサービスに合わせて、必要な項目を選びます。
また、特定商取引法に基づく表記に書く返品やキャンセルの条件と規約の内容は、そろえておくとお客様が迷いません。
特定商取引法に基づく表記の書き方は「特定商取引法に基づく表記の書き方|カウンセラー・個人事業主向け」の記事で説明しています。
不安なときは弁護士に確認する
規約の条項が有効かどうかは、サービスの内容やお客様との取引の実際によって判断が変わります。
そのため、この記事では、具体的な規約の文面は示していません。
不安なときは、弁護士などの専門家に規約の確認を依頼してください。
この記事を書いた人
まとめ
今回は、カウンセラーや占い師がお客様に示す、約款(利用規約)の基本について説明しました。
利用規約は、お客様に示して同意を得ることで契約の内容にできます。
お客様がいつでも見られるようにしておくと安心です。
ただし、お客様に一方的に不利な条項は、無効になったり、合意したものとみなされなかったりします。
特に、責任の免除とキャンセル料は注意が必要です。
利用規約は、お金や約束のトラブルからあなた自身を守るためのものです。
なお、個別の条項が有効かどうかは、弁護士などの専門家にご確認ください。
規約の個別の判断はお答えできませんが、ひとり起業そのもののお悩みなら、些細なことでも構いませんのでお気軽にご連絡くださいね。
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