ひとり起業のカウンセラーや占い師が知っておきたい開業届の出し方
今回は、開業届の出し方について説明していきます。
結論からお伝えすると、カウンセラーや占い師として独立するなら、多くの場合、法人ではなくまず個人事業主として開業届を出すのが自然な一歩です。
前回は、ひとり起業のカウンセラーや占い師の屋号の決め方についてお伝えしました。
屋号が決まったら、次に取り組むべきことが開業届の提出です。
日本政策金融公庫の調査によると、女性が開業する際の経営形態は個人事業主が70.1%と最も多く、男性(58.6%)よりも高い割合になっています。
法人と違い、個人事業主は開業届を出すだけで事業をスタートできるため、初期費用もほとんどかかりません。
今回は、個人事業主と法人の違いを整理した上で、開業届の出し方や注意点についてお伝えします。
もくじ
開業届とは
開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)とは、事業所得や不動産所得、山林所得を生む事業を始めたことを、税務署に知らせるための書類です。
出さなくても罰則はない
開業届を提出しなくても、罰則はありません。
ただし、提出しないと、後述する青色申告などのメリットを受けられなくなります。
出すことで得られるメリット
開業届を出すことで、次のようなメリットが得られます。
- 青色申告が可能になり、最大65万円の特別控除を受けられる
- 屋号付きの事業用銀行口座を作りやすくなる
- 個人事業主としての証明になり、取引先への信用力が上がる
- 小規模企業共済に加入できるようになる
- 補助金や助成金、融資の申請で有利になる場合がある
- 経費計上の根拠が明確になる
一方で、開業届を出さない場合、青色申告が使えず、白色申告のみになります。
また、屋号付きの口座も作りにくく、公的な事業証明としての効力も弱くなります。
副業として始める場合であっても、事業として継続していくつもりであれば、開業届を出しておいた方が有利です。
個人事業主と法人の違い
これから独立するにあたって、まず整理しておきたいのが、個人事業主と法人の違いです。
一言で言うと、個人事業主は自分自身が事業を行う形であり、開業届を出すだけで始められます。
一方、法人は株式会社や合同会社のように、法律上、自分とは別の存在として会社を作り、その会社が事業を行う形です。
始めやすさ
個人事業主は、開業届を出すだけで始められます。
法人は、定款の作成や登記など、始めるまでにいくつかの手続きが必要です。
初期費用
個人事業主は、ほぼ0円で始められます。
法人の場合、合同会社で約6〜15万円、株式会社で約20〜30万円ほどの設立費用がかかります。
責任の範囲
個人事業主は「無限責任」を負います。
これは、事業で借金をした場合、事業用の財産だけでなく、自宅や個人の貯金など、個人の財産すべてを使って返済する責任があるという意味です。
法人は「有限責任」となり、出資した金額の範囲内でのみ責任を負います。
そのため、事業がうまくいかなかった場合でも、個人の財産にまで影響が及ぶことは基本的にありません。
税金の仕組み
個人事業主は所得税の対象となり、所得が増えるほど税率が上がります。
法人は法人税の対象となり、税率は所得税に比べて比較的一定しています。
社会保険
個人事業主は、国民健康保険と国民年金に加入します。
法人の場合、代表者一人であっても、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務になります。
信用力
法人は、取引先や金融機関からの信用を得やすい傾向にあります。
融資や大口の契約の審査などで、個人事業主より有利に働くケースが多くなります。
事務の手間
個人事業主は、比較的手間が少なくて済みます。
法人は、決算や社会保険関連の手続きなど、事務の手間が多くなります。
赤字の繰越
事業で赤字が出た場合、その赤字分を翌年以降の黒字と相殺できる制度があります。
個人事業主(青色申告)は3年間、法人は10年間、この相殺が可能です。
期間が長いほど、将来の黒字にかかる税金を抑えやすくなります。
個人事業主のメリット
- すぐに始められ、費用もほとんどかからない
- 手続きがシンプルである
- 利益が少ないうちは、税金や社会保険の負担が軽い場合が多い
- 自分ひとりで自由に物事を決められる
個人事業主のデメリット
- 事業で借金をすると、個人の財産(自宅や貯金など)にまで影響が及ぶ可能性がある
- 所得が大きくなるほど、税率が高くなる
- 法人に比べて、社会的な信用がやや低く見られる場合がある
法人のメリット
- 責任の範囲が限定される(有限責任)
- 利益が大きくなると、税金面で有利になるケースが多い
- 取引先や金融機関からの信用が高くなりやすい
- 役員報酬や退職金など、経費にできる幅が広がる
法人のデメリット
- 設立に費用と時間がかかる
- 赤字でも毎年かかる「均等割」という税金(最低でも年間7万円)や、税理士費用など、維持コストが発生しやすい
- 社会保険への加入義務があり、負担が増える
- 事務手続きが複雑になる
初心者への目安
小さく始めて試してみたい場合は、個人事業主として開業届と青色申告からスタートするのが良いでしょう。
ある程度の売上が見込め、信用力を重視したい場合や、リスクを限定したい場合は、法人を検討する余地があります。
一般的には、事業所得が500万円を超えたあたりから法人化を検討し始める人が多く、800万円前後になると、税負担の面で法人の方が明確に有利になるケースが多いと言われています。
ただし、最初から法人にする人もいますが、ひとりで起業する場合は、まず個人事業主として始め、事業が軌道に乗ってから法人化するケースが一般的です。
まずは個人事業主から始めるべき理由
ここまで、個人事業主と法人の違いを見てきました。
結論として、ひとりでカウンセラーや占い師として独立する場合、多くの人にとって、まず個人事業主として始めるのが自然な選択になります。
理由は、主に次の3つです。
開業のハードルの低さ
個人事業主であれば、開業届を出すだけで、すぐに事業を始められます。
法人のように、定款の作成や登記といった手続きに時間と費用をかける必要がありません。
収入が不安定な時期のリスクの小ささ
開業したばかりの時期は、収入が不安定になりがちです。
個人事業主であれば、社会保険や均等割といった、法人特有の固定費が発生しません。
そのため、売上が少ない時期でも、経済的な負担を抑えながら事業を続けられます。
後から法人化できる
事業所得が500万円を超えたあたりから法人化を検討し始め、800万円前後で明確に有利になるケースが多いとされています。
つまり、最初から法人を選ばなくても、事業が軌道に乗った段階で法人化すれば十分間に合います。
これらの理由から、ひとりで開業するカウンセラーや占い師の場合、まずは個人事業主として開業届を出し、事業の様子を見ながら、必要に応じて法人化を検討するという流れが現実的です。
開業届の提出期限
2026年の法改正で期限が変わった
以前は、開業日から1か月以内に提出するルールでした。
しかし、2026年1月1日以降に開業した場合は、所得税法の改正により、事業を開始した年分の所得税の確定申告期限まで、つまり翌年3月15日までに提出すればよいことになりました。
期限に余裕ができたとはいえ、屋号付き口座の開設や、補助金・融資の申し込みでは開業届の控えが必要になる場面も多いため、開業したら早めに提出しておくのが安心です。
青色申告承認申請書は別に期限がある
青色申告をしたい場合は、開業届とは別に、青色申告承認申請書を提出する必要があります。
この申請書には、開業届とは異なる期限が設けられています。
1月1日から1月15日までに開業した場合は、その年の3月15日までに提出します。
1月16日以降に開業した場合は、開業日から2か月以内に提出します。
この期限を過ぎると、その年は青色申告ができず、白色申告になってしまいます。
そのため、青色申告を考えているなら、開業届と青色申告承認申請書は同時に提出するのが安全です。
開業届の提出方法
開業届の提出方法には、次の3つがあります。
e-Tax(オンライン)
24時間いつでも提出でき、本人確認書類の添付も不要です。
マイナンバーカードと、スマートフォンまたはICカードリーダーが必要になります。
近年は、この方法が最も手軽な提出方法として主流になっています。
郵送
税務署に足を運ばずに提出できます。
用紙と、本人確認書類のコピーを送付します。
窓口への持参
その場で内容を確認してもらえたり、間違いがあれば訂正してもらえたりします。
初めて開業届を出す人には、この方法が向いています。
いずれの方法も、費用はかかりません。
freee開業やマネーフォワードなどの無料サービスを使えば、質問に答えるだけで書類の作成から提出まで進められます。
開業届の書き方のポイント
開業届には、いくつか記入に迷いやすい項目があります。
提出先の税務署
納税地を管轄する税務署に提出します。
納税地は、原則として住民票の住所地です。
職業欄
心理カウンセラー、占い師、ライフコーチなど、事業内容がわかる一般的な名称を記入します。
造語や専門用語を避け、誰が読んでもわかる言葉にすると、税務上もスムーズです。
屋号
屋号は任意のため、空欄でも問題ありません。
後から確定申告のタイミングで記載することもできます。
開業日
実際に事業を始めた日を記入します。
最初の仕事を受けた日や、本格的に活動を始めた日を基準にすると良いでしょう。
未来の日付は使えません。
事業の概要
「個人向けの心理カウンセリング業務」「タロット占い・スピリチュアル相談」など、具体的に記入します。
所得の種類
通常は「事業所得」を選びます。
届出の区分
新たに事業を始める場合は、「開業」にチェックを入れます。
よくある誤解
開業届を出すと納税しないといけないのか?
開業届は、事業を始めたことを税務署に報告するだけの書類です。
税金がかかるかどうかは、その年の利益(売上から経費を引いた金額)によって決まります。
利益が少なく、所得が一定以下であれば、所得税はかかりません。
赤字であれば、所得税は基本的にゼロです。
つまり、開業届を出した瞬間に税金が発生するわけではありません。
むしろ、開業届を出して青色申告を選べるようになれば、税金を抑えられる可能性が広がります。
青色申告と白色申告の違い
確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。
白色申告は、事前の申請が不要で、誰でも行えます。
特別な控除はなく、帳簿も簡易な方法で構いません。
ただし、赤字を翌年に繰り越すことはできません。
家族に給与を支払った場合も、経費にできる金額には上限があります。
青色申告は、事前に青色申告承認申請書の提出が必要です。
最大65万円の特別控除が受けられ、赤字は3年間繰り越せます。
家族への給与も、要件を満たせば、上限なく全額を経費にできます。
その分、帳簿は複式簿記でしっかりつける必要がありますが、会計ソフトを使えば、以前ほど難しくはありません。
迷った場合は、青色申告を選んでおくと、節税の面で有利になりやすいです。
開業届を出した後の流れ
開業届を出した後は、次のような流れで進めるのが一般的です。
- 屋号を決める(前回の記事を参照)
- 開業届を提出する
- 同時に、青色申告承認申請書を提出する
- 事業用の銀行口座を作る
- 会計ソフトを導入し、日々のお金の出入りを記録する
- 翌年、確定申告で売上と経費を申告する
開業届は、事業のスタートを税務署に伝える最初の一歩であり、ゴールではありません。
よくある質問
資本金は必要か
個人事業主に、資本金は必要ありません。
資本金は、法人を設立する際に必要となる考え方です。
法人化はいつ検討すべきか
個人事業から法人化することは可能です。
事業所得が500万円を超えたあたりから検討を始め、800万円前後になると、法人の方が税負担の面で明確に有利になるケースが多いとされています。
この記事を書いた人
経験と専門性
- 夫婦でモラハラの問題を克服した専門家
- ASD・ADHDの混合型診断済み
- モラハラ加害者としての更生を実現
- 週刊文春オンラインで連載で加害者心理と更生過程を完全公開
臨床経験(2010年〜)
カウンセラーとして幅広い支援経験
- 公的機関での生活保護・生活困窮者自立支援
- 福祉施設での精神疾患・発達障害者支援
- うつ病の方の復職支援
- 元受刑者・薬物依存者への更生支援
- ひとり親・DV被害者相談
- 企業内パワハラ相談
- 自助グループ・セミナー開催
メディア掲載実績
新聞・雑誌掲載
- 週刊文春オンライン(2024年11月 3記事連載)
- 産経新聞(2021年9月)
- 神戸新聞 まいどなニュース(2021年3月)
- 中日新聞 ねぇねぇちょっと特別編(2021年12月)
- ウレぴあ総研 ハピママ(2023年7月 3記事掲載)
テレビ・ラジオ出演
- NHK「ほっと関西」(2021年11月出演)
- KBS京都「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」(2021年9月出演)
- ABEMA『秘密のママ園』様 2026/4 #12ママのモラハラ化問題!出演
- ABEMAPrime(アベプラ)様 2026/7/13出演
- ABEMAPrime(アベプラ)様 YouTube版はこちら
まとめ
今回は、個人事業主と法人の違いを整理した上で、開業届の出し方や注意点についてお伝えしました。
開業届の提出は法律上の義務ですが、罰則はなく、多くのメリットがあるため、早めに提出しておくのが安心です。
もし、開業届の書き方や、開業後の集客について詳しく相談したいという方がいらっしゃいましたら、些細なことでも構いませんので、お気軽にご連絡くださいね。
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